表具師・小渕博由の家系図ブログ

裏彩色

2012年7月8日|カテゴリー:表装

作画方法「裏彩色」を紹介します。
絵絹の裏側に彩色をして表の彩色の深みを出します。
また、輪郭を強調させたり表の絵具を固定する効果もあります。
12世紀前後の仏画には良く使われている技法です。
最近では伊藤若冲(1716〜1800年江戸時代中期)作
「動植綵絵」に裏彩色の技法を使い描かれています。

画像は蹄斎北馬(1770〜1844年 江戸後期 浮世絵師 葛飾北斎の門人)

裏彩色

裏彩色

補絹作業

2012年7月4日|カテゴリー:表装

補修作業の「補絹」(ほけん)をご紹介します。作品は江戸後期に
描かれた作品です。海外に流出しておりましたが今年、
日本に里帰りした作品です。欠損した部分を絹糸の太さや織の
間隔など似ている絵絹を用い欠損部分より、1mm程度大きく
隙間が出無いようメスを用い切り 、新しく絵絹を埋めて補彩で
色合わせします。

写真の中央に埋め終わりました絵絹(周りの絵絹より白く見える箇所)
がございます。
補絹

補絹作業

今日は仕事で有楽町へ

2012年7月3日|カテゴリー:日々のこと

今日はお取り引き頂いてる画商さんのところへ出かけて参りました。
現在、製作中の掛軸の写真撮影や寸法の打合せをしてきました。

扱われている美術品は超一流品
今までの知識と経験値を合わせ仕事をさせていただきますが大きな壁に遮られるような思いになります。
しかし、毎回そちらのギャラリーで働かれている方に沢山のお話をしていただき奮い立つ想いで帰ってきます。

今日は、社長の『好み』について、お持ちの掛軸を見せていただき寸法・バランスなどの話をしていただき
頭に叩き込み帰ってきました。
若い頃は掛軸・屏風・巻子など表具全般の形が作れる事だけで満足していた頃もありました。
思い返すとかなり恥ずかしく思います。

一幅の掛軸を仕立てるには、材料へのこだわり・研ぎすまされた感覚・技術そして
お客様の「好み」だということを改めて感じました。
私は今年45歳になります表具の勉強を始めたのが8歳です。
まだまだ自分に足りないところがありますが何時しか必ず、お客様も自分自身も満足出来る一幅を仕立てられるよう 日々精進するのみです。

 

今日は仕事で有楽町へ

カスガイ作業をご紹介

2012年7月2日|カテゴリー:表装

今日ご紹介する作業は掛軸や巻子本(かんすぼん:巻物のこと)の
主に本紙あたる紙本・絹本・絖(ぬめ)部分が
折れたり亀裂を起こし損傷することを防ぐ修復方法です。
修復の際 古い美濃紙を保存して使用したり
先日ご紹介した本美濃紙を8厘程度で裁断(力紙)して使用します。
画像は下からライトをあてて作業をしています。
カスガイ作業

カスガイ作業をご紹介

和紙のご紹介

2012年7月1日|カテゴリー:表装

今日ご紹介します和紙は「本美栖紙」です。
原料は「姫楮 」の樹皮を使います。
産地は奈良県吉野地方です。
特徴は胡粉(ごふん:貝殻 炭酸カルシウム)を混じて漉いています。
非常に 腰が柔らかく糊がなじみやすいく伸縮が少ないのが特徴です。
また、大きさが約2尺1寸×8寸程度の小さい紙です。
それを縦に喰先(くいさき)をしてつなぎ合わせ長い紙に加工し用います。
裏打ち個所は増裏打ちになります。
本紙・絹本・裂地は様々な厚みに異なり本美栖紙で厚み調整を行います。
本美栖紙
繋いだ本美栖紙

増裏は
肌裏後、引干ししました本紙・裂地 に水を含ませ(水刷毛・噴霧器)よく伸ばし
古糊(精製水95%:古糊5%掛軸幅で異なります)を塗りシュロ刷毛で貼付け
打刷毛で叩き込みます。
打刷毛で叩く事で 和紙の繊維をからませまた、同時に肌裏後の固さを取り除く作用があります。
打刷毛

古い袈裟や着物を用い制作する場合は良い本美濃紙(極薄)を用いると仕上がりが良いです。

和紙のご紹介

肌裏作業

2012年6月30日|カテゴリー:表装

肌裏作業シュロ刷毛肌裏の作業をご紹介します。
肌裏(はだうら) は作品(絹本・本紙)、裂地(きれじ) に行う最初の裏打ちの事です。
用いるのは前回ご紹介しました本美濃紙です。
和紙には縦目横目がありまた、本紙にも縦紙・横紙があり紙取りの際、美濃紙を縦目で使用したり
横目で使用したりします。私は裂地には横目、本紙には十字になるよう紙取りします。

本紙・裂地に精製水を含ませ(水刷毛・噴霧器を使用)縮みを強制します。
紙取りした本美濃紙に炊いた生麩糊をそれぞれに合った濃度に希釈して使い
塗り終わりました和紙は柔らかく強度が落ちているため木を使い糊台から剥がし上げます。
次に画像のようにシュロ刷毛で撫で込みます。
糊は水糊(裂地の場合:生麩糊35%精製水65%)を使うため接着力が弱く貼付けるには
手首を使いシュロ刷毛(一丁半以上)を立てて刷毛先を利用したり寝かせ繊維を落着かせ、何しろ良く撫でます。
水分を含み和紙の強度が落ちているため経験値や指から伝わる感覚で痛めず撫で貼付けます。

肌裏作業