家系図の自然素材へのこだわり。表具師 小渕博由

なぜ源氏物語絵巻は、千年経った今でも現存しているのか。

それは、墨と和紙が関係しています。
硯で擦ることで、膠(にかわ)が墨を定着・コーティング。
それにより長い間、墨の黒さを保つことができます。
さらに、和紙は繊維が長いため丈夫で、100年、千年もの保存が可能なのです。
歴史を綴る家系図は、代々受け継がれていくもの。
故に和生堂では墨や和紙などの自然素材にこだわって家系図を作成しています。

自然素材で制作された家系図は修復が可能で、100年周期で修復することで、千年もの長期保存が可能になります。

表具師・小渕博由の家系図の自然素材へのこだわり。

家系図とは、「家宝」であり、代々受け継がれていかなければならないと考えています。昨今の家系図作成ブームで手軽に家系図を作成できるようになったがゆえに、工業製品・化学薬品が使われるようになりました。そのため多くの家系図が長い年月を超えることなく、輝きを失ってしまっています。
みなさまの大切な想いを次の世代へと繋いでいけるよう、長期保存が可能で、経年劣化した後でも修復ができる家系図制作をしています。表具師として、自然素材にもとことんこだわっています。

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表具師・小渕博由の写真

墨

墨(すみ)

墨色の美しさは、100年の時を越える。

煤(すす)と膠(にかわ)を原料とする固形墨は、和紙によく浸透し、繊維にからみつくという特性があります。固形墨を硯(すずり)で擦ることで、膠が融け出し墨を定着・コーティングします。それにより長い間、墨色の美しさを保つことが可能に。

源氏物語絵巻が千年もの長い年月に耐え、鮮やかな墨色の美しさを保っているのは自然原料のみを使用した固形墨を使っているからです。

和生堂の家系図は、油煙墨を使用し、硯で擦って毛筆で書きます。
油煙墨は、菜種油を燃やした際に出る煤を膠で練って乾燥した物であり、煤の粒子が細かく均一で、墨色に光沢と深味があります。

和紙(わし)

3種類の手漉き和紙を使用することで、長期保存が可能に。

和生堂では、長期保存が可能な手漉き和紙を使用しています。
巻物を痛める一番の原因は経年劣化と虫喰いです。

和生堂の家系図巻物は薄美濃紙(うすみのかみ)、本美栖紙(ほんみすがみ)、雁皮紙(がんぴし)の3層構造になっています。

国産楮(こうぞ[クワ科の植物])が原料の薄美濃紙(うすみのかみ)・本美栖紙(ほんみすがみ)は、繊維が長く絡み合う性質なため、粘りが強く丈夫な和紙です。

雁皮紙は繊維が細く短いのできめの細やかな和紙です。そのため丈夫で虫喰いにも強く、古来より貴重な文書や金札に用いられていました。

この3種の和紙を重ねて使うこと(裏打ち)で強度が増し、長期保存が可能に。さらに日本特有の四季の変化にも対応できるようになります。

和紙や糊は月日とともに酸化していきます。そのため和生堂が使用している和紙は、弱アルカリ性の石灰・白土が入っており、保存に適した中性で仕上がるように制作しています。

手漉き和紙(薄美濃紙・本美栖紙・雁皮紙)

手作りの糊を漉す

糊(のり)

糊は表具師にとって命のようなもの。

古来より使われてきた生麩糊(しょうふのり)を使用しています。
昔から表具に携わる職人にとって、糊は命の次に大切なものとして扱われてきました。墨や和紙同様、自然素材100%の材料を使用することで、家系図の長期保存が可能になります。

和生堂では、昔ながらの製法で防腐剤を使用しないで炊いた生麩糊を使用しています。この生麩糊は家系図が強張りの少ない柔軟な仕上げとなり、さらに修復の際に剥がれやすいという利点があります。
また、5年以上発酵、熟成させた古糊(ふるのり[定着力が弱い])を使用ししなやかな仕上げにしたり、新糊とを混ぜ合わせ、定着力を調整したりと表具師の伝統技術が活かされています。

生麩糊を使用した巻物などは、年月が経過し、ある期間になると、自然に糊の接着力が低下し、修復時期の到来を教えてくれます。スーッと剥がれていく様は圧巻です。

膠(にかわ)

高級な鹿膠を用いて美術表装を。

膠とは、動物の骨や皮、腱などから抽出した動物のコラーゲンをもとに作られる接着剤です。古来より美術装飾などのさまざまな場面で用いられてきました。

和生堂の家系図でも美術装飾として砂子(すなご)をする際、金箔を留めるための接着剤として使用しています。砂子は何層にも塗り固めるため、透明度が高い膠は最適です。

和生堂では、高級なものとされる鹿膠を使用しています。

鹿膠

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